2014年01月18日

苫野一徳氏「どのような教育が『よい』教育か - 建設的な教育議論のために」

「教育とは何か、そしてそれは、どのようにあれば「よい」といいうるか。」「教育の本質と正当性の原理を探究解明することは、教師だけでなく、教育行政をはじめ教育の構想にかかわるすべての人たちにとっても、きわめて重要な意味を持っている。」(苫野一徳どのような教育が「よい」教育か』序章より)

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2014114日、一般社団法人教育共創研究所で、教育哲学者の苫野一徳氏(早稲田大学・日本学術振興会)をお招きし、「どのような教育が『よい』教育か - 建設的な教育議論のために」と題したセミナーを主催いたしました。

一般社団法人教育共創研究所とは、地域から全国の教育に働きかけていくプラットフォームです。議会質問の研究や結果を全国の地方議員と共有し、地方議会から日本の教育を良くしていこうと取り組んでいます。

議会質問勉強会やセミナー、国内外の教育先進事例の視察、Web上での議会質問共有を行ってきました。

2000年以降、教育行政の政治主導が進んできています。最近の教育委員会改革の議論を見ても、その傾向は強まっています。教育委員会での権限が弱まりつつある中、首長に対する議会のチェック機能がますます重視されてきます。議員も教育に関して、チェックできる力を持たなければなりません。

 

「ゆとり」か「つめこみ」か?「叱る」のか「ほめる」のか?
教育問題の様々な理念対立はなぜ起こるのでしょうか?
歴史を振り返っても、これまで同じような論争は繰り返し行われてきました。いたずらに表層的な論争を繰り返すのではなく、日本の教育を少しでも前に進めていくためには、課題や論点の整理が不可欠といえます。そこで今回は、気鋭の哲学者・教育学者であり、『どのような教育が「よい」教育か』の著者である苫野一徳氏をお招きし、教育問題を哲学問題ととらえ直し、現代教育の行き詰まりを根本から考え直す機会にしたいと思い企画いたしました。


これまで教育は、たとえば、いじめ事件や学力低下など、表面的な議論をされてきました。しかし、苫野氏は、哲学の認識の原理から、人類の歴史まで掘り下げて、底の底から考えた教育の根本原理を提示されました。

「どのような考え方をすれば、誰もが納得できるような考え方といえるか?」

たとえば、「先生に厳しく指導されたから、今、立派になった。だから厳しく教育すべきだ」など、人は自分の考えや経験を一般化してしまいがちです。これを苫野氏は、「一般化のワナ」と呼び、気をつけるようにと指摘します。

また、たとえば、「厳罰主義か、感傷主義か?」、「教えこむべきか、主体性を重視すべきか?」など、どちらかが正解かのような問いの立て方を「問い方のマジック」と呼んでいます。つまり、答えは二者択一ではなく、目的や状況によって変わりますし、それ以外の選択肢を無視してしまうからです。

「どのような考え方をすれば、誰もが納得できるような考え方といえるか?」

もう一度、考えてみます。

たしかに、「これこそが正しい教育だ」という答えはありません。相対主義が台頭し、建設的な議論ができない時代が続きました。しかし、他者の意見を受け止め、そこからお互いの納得のいく考え方を作り出していこうとすることはできるはずです。

苫野氏は、この誰もが納得できる原理として「自由の相互承認」を提示しました。ホッブズ・ルソー・ヘーゲルと社会を構想した哲学をたどり、ヘーゲルの「人間の本質は自由である」という考えを基礎としています。

教育の原理は、「各人の〈自由〉および社会における〈自由の相互承認〉の〈教養=力能〉を通した実質化」であると、苫野氏は示します。

各人の自由を保障する「権利」や他者の自由を侵害しない「ルール」、一部の人のみならず、すべての人の自由を実現するための「一般福祉」を重要と考えています。

より「良い」教育のあり方や方法は、その「目的」を達成するために、「状況」に応じて選択・組み合せ・創造されるものです。

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講演の要旨をまとめてみると、ごく当たり前の話で、拍子抜けしてしまうかもしれません。「良い」教育とは、◯◯である、と断言してもらったほうが、ご利益がありそうな気がします。しかし、実際の社会は複雑で、多様であり、それぞれの状況に応じて、目的達成のために対応していくという考えは、納得できるものではないでしょうか。

状況を把握するために社会科学が必要となり、目的を明確にするために哲学が必要となります。

教育問題を論じるときに、「一般化のワナ」に陥っていないか?、「問い方のマジック」かかっていないか?、を自問自答し、自由の相互承認の実現という観点で考えてみたいと思います。



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