2012年05月24日

発達障害児が通うインターナショナルスクール

産経新聞2012.05.21より転載
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120516/edc12051607440002-n1.htm

 
「発達障害児が通うインターナショナルスクール 特性生かし生きる喜び発見」

 

歴史の授業風景。午前は8人以下の少人数で授業を行い、午後は個別授業だ=東京都港区のインターナショナルセカンダリースクール(豊田真由美撮影) 

 知的障害を伴わない軽度の発達障害を抱える子供たちが通うインターナショナルスクールがある。東京都港区のNPO法人「インターナショナルセカンダリースクール(ISS)」だ。現在は日本人を含む37人が通学。専門家らによる少人数教育と個別指導のほか、一人一人の特性を生かす進路選択の支援を受けている。(豊田真由美)

 

自己管理を教える

 ISSは平成12年に開校。日本の小学6年から高校2年に当たる子供たちを受け入れている。大使館や外資系企業などに勤める親とともに来日し、数年間滞在することになった外国人の生徒が多い。生徒の出身国は現在、シンガポール・韓国・スウェーデンなど17カ国。日本人の生徒も全体の3割程度いる。

 同校の坪谷ニュウエル郁子理事長によると、生徒のほとんどが医師や別のインターナショナルスクールからの紹介で入学。半数超が注意欠陥・多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)などの発達障害を持つ。残りの約半数は、別の学校でいじめに遭うなどして不登校になった子や、日本語も英語も分からないことがネックとなり入学先が見つからなかった10代後半の子らという。

 授業は1こま90分。午前は8人以下での授業、午後は個別指導を英語で行う。授業の冒頭でこれから取り組む内容を自覚させ、自己管理を徹底して教えている。入学当初は一日中寝ていた子や、授業中に突然近くの公園へ水を飲みに行っていた子も、7カ月ほどたつと問題なく授業に参加できるようになるという。

 坪谷理事長は「それぞれの特性を生かしたゴールを設定して根気よく教えれば、子供は自分のやりたいことを探し、自分の力で生きていく喜びを見つけられる」と話す。卒業生の多くは国内外の大学に進学している。

 

目標はモデル校

  坪谷理事長は、教科書や試験のない独自の教育方法で注目を集める「東京インターナショナルスクール」(港区)の創設者でもあり、国際教育に30年近く携わってきた。その中で、宗教や民族にかかわらず、発達障害が理由で日本の学校になじめない子供が一定の割合で存在することに気づいた。海外では「発達障害と診断された子供を持つ親は日本に赴任させない」という不文律さえあると知り、「大人の都合で(教育機関から)あぶれる子供がいるのは悲しい。教育は本来、その子にとってベストとされることが優先されるべきだ」とISSを開設した。

 2年前まで57人が通っていたが、東日本大震災で母国に引き揚げる外国人が急増。生徒数が37人に激減した。校舎として使用しているビルの賃料は月約300万円。生徒が減っても教員は減らせない。授業料収入が減った今、運営は厳しい状況だ。

 それでも、坪谷理事長は「子供は社会の宝。子供がどう考え、どう生きるかで将来が変わる」と使命感に揺るぎがない。「今後の目標は(発達障害の子供に教える学校として)モデル校になること。通訳を付ければ日本の先生のOJT(職場内訓練)やワークショップも可能だ。日本社会にとって意味あることができると思う」と自信を見せる。



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