オランダの教育

2014年04月29日

スティーブ・ジョブズ・スクールを訪問して-オランダ報告11

2014324日から29日、(社)教育共創研究所はオランダ視察を主催しました。

イエナプラン教育の小学校、ダルトン教育の中等学校、スティーブ・ジョブズ・スクール(小学校)、教員養成機関(高等専門学校)、ロッテルダムの教育サポート機関CEDと特別支援学校を訪問し、この視察のコーディネーターであるリヒテルズ直子氏によるレクチャーと盛り沢山の内容となりました。今後、一つひとつご報告していきます。

 

スティーブ・ジョブズ・スクール

【インターネットの影響】

 現代社会では、インターネットが生活の一部となってきている。書類もPCで作成し、メールで送る。情報の更新が速い。中学生の時に覚えた内容が、20年後に役立つという保証はなくなった。情報量も爆発的に増加し、「知っている」ことよりも、学び方を身につけることが大切になってきた。教育のあり方も変わってくる。

働き方も変わってきた。単純作業をこなすことよりも、考えて行動する力が求められるようになってきた。学校でも、決まった内容を覚え、与えられた課題に答えるだけではなく、自分で課題を発見し、解決していく能力を育てようという流れに変わりつつある。

社会は複雑になり、個人や一つの組織で物事を解決できなくなってきた。関係者との協力が必要となる。学校では、協働することを学ぶようになってくる。

一人の先生が大勢の生徒たちに、知識を伝える画一的な一斉教授から、一人ひとりにあったオーダーメイドの学びに転換していく。

これらの教育についての考えは、教育哲学者デューイが提唱し、日本でも大正時代に新教育運動として、いくつかの実践がみられる。しかし、戦争の影響もあり、衰退した。何より、予算の問題もあり、一人ひとりにあった教育の実現は、当時では難しかった。

今、インターネットによって可能になる。家で授業の動画を見て、学校で協働学習する反転授業と呼ばれる授業方法が注目されている。

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スティーブ・ジョブズ・スクールとは】

上記のような社会変化から、20138月、オランダで10校の「スティーブ・ジョブズ・スクール」とよばれる小学校が試験的に開始された。筆箱やノートではなく、iPad(タブレット型コンピューター)などを活用。教科書と連動したソフトを使ではなく、実社会を教材としている。自由な学び方を採用しているが、学習内容は国が定めた学習目標にそったものである。
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DSCN1787始業時間はなく、決められた時間割はない。児童が自分たちで、時間割を組む。校舎もつねに開かれているので、児童はいつでも登校することができる。従来のようなクラスや学年、教室という概念もない。異なる学年の児童が、共に学び合う。実験や技術、美術など、学ぶ内容にあった教室を整備している。

スティーブ・ジョブズが建てたわけではない。それぞれの学校は独立経営である。私が訪問した学校は、裕福な子どもたちの学校と勘違いされるので、もっとオープンな学校名であるPerpetuum小学校に変更すると話しておられた。

【オランダの教育制度】

スティーブ・ジョブズ・スクールがアメリカではなく、オランダから生まれたのは、オランダの教育制度のおかげであると言える。

オランダでは、教育の自由が認められている。学校の教育理念や教育方法は、学校に任せられている。ただ、国によって、到達すべき学習目標は定められており、定期的に学力テストが行われている。成績を競うようなものではなく、子どもの成長を測定し、適切な指導を行うための材料となるテストである。この結果によっては、教育監督局が、学校の指導に入る。自由であるが、しっかりと行政によって管理されている。

多様な学校があるので、児童・保護者は、学校を選択することができる。通わせたい学校が無い場合は、規定(200人ほど)の児童・生徒が集まれば、学校を設立することもできる。設立の費用は、行政から出る。モンテッソーリ、イエナプラン、フレネ、ドルトンプランといった教育の実践が、提唱された国以上に、オランダで根付いているのも、教育の自由が保障されているからである。

オランダでの先進的な教育実践が背景となって、スティーブ・ジョブズ・スクールの特徴として実現している。たとえば、時間割を児童が自分で作ること、学習内容にあった教室を準備することは、ドルトンプラン教育の特徴である。イエナプラン教育では、異年齢の集団でクラスを作っている。現実社会を教材に、探究する学びを展開してきたことも、これまでの教育実践を引き継いでいる。 

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写真 イエナプランのクラスルーム

補足すると、オランダの小学校は、4歳から12歳。4歳の誕生日から通うことができ、バラバラに入学してくる。幼児の1年の差は大きい。4月生まれも、3月生まれも、一律に4月入学という日本とは違う。


【実際に視察して】

 私は、今年3月に、ブレダ市にあるスティーブ・ジョブズ・スクールを訪問した。日本の小学校のように立派な校舎や校庭ではなく、住宅に囲まれたこぢんまりとした施設であった。

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写真 校舎は手前のオレンジの平屋(後ろの建物は住宅)

iPadによる学習が強調されているが、それは方法論の一つに過ぎない。「ハイテクな」印象を持たれるかもしれないが、実際には技術や美術の実習ができる作業室もあり、対話ができる空間もあった。 

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私たちの訪問時、児童は4名しかいなかった。インターネットのオンライン学習との二本柱での一つである、学校での学び合いが、この人数では機能していない。

在籍は15名。学校設立の条件を満たしておらず、現在は企業の協賛によって運営されている。教育監督局とは設立に向けて話し合っており、児童を増やし、学校として認められるよう準備中とのこと。オランダにおいても先進的な学校のため、まだ保護者の理解が得られていないと校長は説明された。

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この学校について、オランダでも賛否が分かれる。
オランダの進学校の校長は、これからの時代の流れと認識されていた。一方で、私が出会った教員志望の大学生は、iPadに没頭し、友人との交流が薄れ、教育的効果はマイナスではないかと答えていた。政治家や評論家からも、否定的なコメントが寄せられている。

現在、オランダでは約六千人の児童が学校に通えておらず、ホームスクーリングの要請が市民からあがっている。また、国ざかいでは、オランダの教育に不満のある保護者が隣国の学校に子どもを通わせていると、校長は危機感を示しておられた。

「現実の社会にあった教育が求められている。もし、シュタイナー(現代の教育にも影響力のある教育哲学者)が生きていたら、iPadを使っていたであろう」と、校長が語っていたのが印象的だった。 

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2013年05月24日

イエナプランの優良校Dr. Schaepmanschool 訪問

2013年2月、Dr.Schaepmanschool Rien van den Heuvel校長先生に再会することができました。
※2012年の訪問 http://goodman.livedoor.biz/archives/51981723.html
Rien van den Heuvel先生が教員になった動機や校長になった経緯も聞かせて頂きました。Dr.Schaepmanschool は、イエナプラン教育を実践している、素晴らしい学校でした。

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Dr. Schaepmanschool (ドクター・スハエプマン小学校)
http://www.schaepmanschool.nl/
イエナプランの優良校の賞を取った学校です。
この学校は、4月13日に日本テレビで放映されるアナザースカイで、尾木直樹さんとともに訪れ紹介されました。

I could meet Rien van den Heuvel (Principal of Dr.Schaepmanschool) again. I

questioned why he became a teacher, and how he became Principal and started Jena-Plan education. Dr.Schaepmanschool is wonderful.




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2013年03月18日

オランダの保育園を視察-オランダ報告10

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【落ち着き、静かに話を聴く子どもたち】

 オランダのハーグ市にある保育園を訪問した。日本でも実践されていることもあるとは思うが、見たことを紹介したい。私が見学したのは、ハーグ市内に約70か所の保育園を経営する民間の保育園であった。そこには、0歳から4歳までの子どもが預けられていた。※オランダでは、4歳の誕生日を迎え、5歳になるまでの間に、小学校に入学する。

 私が、驚いたことは、子どもたちが、机にきれいに並んで、落ち着いて座っていることだった。そして、保育士の顔をじっと見つめ、話を聴いている。





















【保育の工夫】

 説明で、「自立心を育てる」という言葉を、よく耳にする。この自立心が、こどもたちの落ち着きの秘訣のようだ。保育の中の至る所に、この自立心を育てる工夫が盛り込まれている。

たとえば、教室の中に、一人きりになれるスペースが準備されている。みんなと楽しく遊ぶだけでなく、一人になって、考えたり、作業したりする時間が大切にされている。

他に気づいたことは、遊ぶ内容と遊ぶスペースを自分で決めること。遊ぶ時間になると、教室の図の書いたボードがあり、子どもたちは、自分がどこで、何をするかを表明していく。

3つ目は、子どもたちに、保育士が、一日の予定を示していること。その都度、指示を出すのではなく、図で示すなどして、子どもが自分で動けるような環境を整えている。毎日のことなので、子どもたちは、すぐに慣れてくるそうだ。保育士は、「ストラクチャー(構造)を与える」と説明していた。こういった毎日の細かい積み重ねが、表れてくるのだろう。

そして、何より、保育士が落ち着いている。大きな声で注意していないのはもちろん、元気に張り切った姿も見せない。

うつぶせか、仰向けか。その他、遊びは、子どもに任せている。ただ、「すべて自由がいい」と言っているわけではないと強調していた。大きくなればなるほど、他人の気持ちを尊重できるように指導しているとのこと。社会見学に出かけ、マナーや配慮も学ばせている。

















【保育を自己評価し、公開】

 移民の多い地域などもあり、地域ごとに教育プログラムは違う。ただ、この保育園は、3つの点を意識して保育を実践している。ヾ超と子ども-設備や建築。∧欅藥里隼劼匹-保育士が子どもの発達を刺激しているか。子どもと子ども-安定した子どもグループが形成されているか。
 この3つについて、アムステルダム大学などの発達心理学の教授たちと指標を作り、評価している。内容は、保育園の実践として、発信している。これは、園の説明責任であるとのこと。また、大学などの教育機関も、研究結果の信頼につながると、保育現場へ積極的に協力している。

 保育園と親は、日々の送り迎えのほかに、午後八時から開催される懇談会や保育園運営評議会で、話し合う。親との連絡帳は、今日では、インターネットでログインし、写真を使って報告されている。


【保育を取り巻く社会環境】

 保育園では、机やおむつを替える台の高さなど、保育士の腰が痛くならないよう配慮がなされている。オランダでは、ワークシェアが採用されており、保育士は、毎日、勤務しない。産休する保育士もいる。園児も、毎日、通うわけではない。

 待機児童数は、いない。人口40万人ほどの地域に、保育園・託児所が約400あるという。保育園に関しては、「02歳児9人に対し保育士2人」といった規則が決まっている。託児所の定義が違うと言っても、日本とは量の違いがある。

 保育園の待機児童がいない別の理由に、経済不況があげられた。親が失業してしまっている。保育料を払えなくなってきている。保育料は、国から補助が出るが、親の所得によって変動するそうだ。国の財政悪化で、子育てにしわ寄せがきている。

 それでも、子どもは社会で育てなればならないという国の姿勢がはっきりしている。核家族化し、共働き化し、移民も多く、複雑な社会である。この多様な社会を支えるためにも、社会ぐるみで子育てが行われている。

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2012年08月17日

自主自律型の学び‐オランダ報告7

時間割は自分で作る。
時間割

勉強は各自で進める。
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分らないことがあったら先生に質問。進捗を先生に報告。
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大勢の前で挙手するわけではなく、質問しやすい。

先生からの評価は数字ではなく、コメントで。
通知表
評価については、通知表とポートフォリオと三者面談-オランダ報告4を参照。

自学習を支える体系だった教材
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近頃はIT化が進み、個人がログインして学習
IT教材

難しい教材シリーズ・秀才教育
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2012年08月04日

「オランダの教育から学ぶ-脱『画一的教育』のヒント」​オランダの学校訪問報告会!


オランダの学校を訪問した報告会を開催致します。
5月に柏で開催しましたが、都内でも、ぜひ!というご要望にお応えして。
5月から、ブラッシュアップしてきました。
ぜひ、お誘いあわせの上、ご参加ください。

2012年8月22日(水)19:00から、
株式会社ベネッセコーポレーション新宿オフィスにて開催します。

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こちらの登録フォームよりお申込ください。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/60871ca7208649
(お申込み受付期間:8月22日17:00まで)
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子どもが豊かに学ぶオランダの秘密を教育から覗いてみませんか?

講演者2名は4月中旬にオランダの学校を視察して参りました。

今回の講演では、画一教育から個性を伸ばす個別・協同教育のイエナプランの実践、学び方を学ぶスタディハウス、多様性を育むピースフルプログラムなどを報告します。それらは小国オランダならではの智慧と工夫の宝庫であり、現代日本の教育にとって貴重な示唆になると信じています

現地で見聞きしたこと、また学校の教員やリヒテルズ直子さん*との意見交換で得られた知見などをシェアし、今後の日本における教育のありかたをざっくばらんに模索できる場にしたいと考えております。また、講演者がオランダの教育システムを参考にして構想した教育改革のありかたについてもご紹介させていただきます。ぜひご参加ください。

*オランダ教育研究の第一人者。ブログはこちら→http://www.naokonet.com/


【講演者】
山下洋輔
 柏まちなかカレッジ学長
 教育コンサルタント
 柏市市議会議員
 http://www.facebook.com/yosukeyama

長井悠
 ハバタク株式会社 取締役
 http://www.facebook.com/unagai

【講演内容】
 1) オランダの学校教育の概要
 2) 実際に見聞きしてきたこと、意見交換したこと
   学校見学について
   リヒテルズ直子さんとの意見交換について
 3) これからの私たちの教育改革構想

【主催】教育ゼミ
(教育ゼミは教育に関心を持つ者同士の交流を目的とした個人の勉強会グループです)

【共催】一般社団法人 教育共創研究所
【開催発起人】藤村慎也、大沢望、須藤淳彦

【日時】2012年8月22日(水)
18:45開場、19:00開始、21:00閉会

【会場】株式会社ベネッセコーポレーション新宿オフィス
大会議室(新宿三井ビルディング 12階)
※ビルに入り、エレベーターで直接12階まであがってください。エレベーターを降りたところに案内のものが立っております。
※周辺では通常の会議等も開催されております。静粛な進行にご協力ください。
http://www.benesse.co.jp/benesseinfo/map/y_shinjyuku.html

【参加費】無料

【定員】70人

【懇親会(予定)】※希望者のみ
会場近くのお店を予定しております。(懇親会費目安:4,000円)

【お問合わせ先】
須藤淳彦(ベネッセコーポレーション)
 tukukunn@mail.benesse.co.jp
 090-3726-6094
大沢望(教育ゼミ)
 osawa.noz@gmail.com
 080-3342-1360


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2012年07月07日

校庭から考える-オランダ報告6

オランダの小学校を視察し、撮影した映像です。
※Dr. Schaepmanschool (ドクター・スハエプマン小学校)を訪問 2012.04.19

これからの日本の教育は変わると、校庭から考えさせられました。
陸上競技、球技などの団体競技から遊びにシフトするのではないでしょうか。
集団行動より創造性が求められていると感じます。
http://www.youtube.com/watch?v=o3k-Y4FYIz4&feature=my_liked_videos&list=LL7NuBzWEP_-BdPF8OGElwYA

日本の事例では、校庭の芝生化が、こういった変化の流れではないかと感じています。
写真は、四国中央市四国中央市の芝生事業を視察
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怪我が減ったり、運動能力が向上したり、子どもの発育に効果が見られるとのこと。地域の諸団体が連携して、維持管理にあたる。地域での交流が生まれ、市民との協働が始まっています。




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2012年05月21日

先生もワークシェアリング‐オランダ報告5

オランダの学校を、見学して、一番の驚きは、教員までワークシェアリングをしていることであった。担任の先生は、交代で出勤。教材会社から購入したカリキュラムを使って授業する。

日本では、担任する生徒については、その一生を面倒見るくらいの情熱を持って指導する。授業は、独自に研究した教材を使う。しっかりとした授業のために、今では、大学院で学ぶくらいでないと、高校ではつとまらない。教員の労働時間を減らしてもらったとしても、生徒との面談や教材研究にいそしむ人が多いのではないだろうか。
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教材のソフトを使って授業

オランダの教員は、日本の教員と比べ、頼りない。逆に、そこがポイントなのかもしれない。たとえば、複数の教員が担任するためには、情報共有が必要である。つまり、「先生の城(閉ざされた学級)」にはならない。教材会社のカリキュラムを、複数の教員で進めることで、進度が保たれ、当たり外れがない。システムが確立し、教員はプロ意識が徹底していると言える。

オランダは、日本の
3分の2の労働時間で、仕事効率が1.5倍である。日本の教員の素晴らしさを確認するとともに、労働環境を改善するためには、教員自身の意識改革が必要と気づかされた。




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イエナプランとは‐オランダ報告2

イエナプランとは、異年齢・異学年で学級を編成。上級生に教わり、下級生に教える。
車座で対話を通して、協働して学ぶ。同時に、静かに学ぶ時間、自立学習を重視する。
知識面では、学年ごとの小集団に、先生が説明。理解した児童・生徒から、自立学習に移る。友達に教わったり、PCや図書で調べたり、先生に質問して、身につけていく。

ドイツのピーター・ペーターゼンによって、1923年ころから研究と教育実践が始まった。
第二次大戦やペーターゼンの死によって、ドイツでは停滞。1950年代にオランダに入り、発展を遂げる。
70年代のオランダの学校教育改革、特に画一教育から個別教育への変換に、甚大な影響をもたらした。

Dr. Schaepmanschool (ドクター・スハエプマン小学校)
http://www.schaepmanschool.nl/
イエナプランの優良校の賞を取った学校です。
この学校は、4月13日に日本テレビで放映されるアナザースカイで、尾木直樹さんとともに訪れ紹介されました。
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中央 Dr. Schaepmanschool (ドクター・スハエプマン小学校)の校長先生
左 長井悠ハバタク株式会社取締役
右 山下洋輔

イエナプラン教育の20の原則
http://study.japanjenaplan.org/?cid=2 より引用

1.
どんな人も、世界にたった一人しかいない人です。つまり、どの子どももどの大人も一人一人がほかの人や物によっては取り換えることのできない、かけがいのない価値を持っています。

2.
どの人も自分らしく成長していく権利を持っています。自分らしく成長する、というのは、次のようなことを前提にしています。つまり、誰からも影響を受けずに独立していること、自分自身で自分の頭を使ってものごとについて判断する気持ちを持てること、創造的な態度、人と人との関係について正しいものを求めようとする姿勢です。自分らしく成長して行く権利は、人種や国籍、性別、(同性愛であるとか異性愛であるなどの)その人が持っている性的な傾向、生れついた社会的な背景、宗教や信条、または、何らかの障害を持っているかどうかなどによって絶対に左右されるものであってはなりません。

3.
どの人も自分らしく成長するためには、次のようなものと、その人だけにしかない特別の関係を持っています。つまり、ほかの人々との関係、自然や文化について実際に感じたり触れたりすることのできるものとの関係、また、感じたり触れたりすることはできないけれども現実であると認めるものとの関係です。

4.
どの人も、いつも、その人だけに独特のひとまとまりの人格を持った人間として受け入れられ、できる限りそれに応じて待遇され、話しかけられなければなりません。

5.
どの人も文化の担い手として、また、文化の改革者として受け入れられ、できる限りそれに応じて待遇され、話しかけられなければなりません。

6.
わたしたちはみな、それぞれの人がもっている、かけがえのない価値を尊重しあう社会を作っていかなくてはなりません。

7.
わたしたちはみな、それぞれの人の固有の性質(アイデンティティ)を伸ばすための場や、そのための刺激が与えられるような社会をつくっていかなくてはなりません。

8.
わたしたちはみな、公正と平和と建設性を高めるという立場から、人と人との間の違いやそれぞれの人が成長したり変化していくことを、受け入れる社会をつくっていかなくてはなりません。

9.
わたしたちはみな、地球と世界とを大事にし、また、注意深く守っていく社会を作っていかなくてはなりません。

10.
わたしたちはみな、自然の恵みや文化の恵みとを、未来に生きる人たちのために、責任を持って使うような社会を作っていかなくてはなりません。

11.
学びの場(学校)とは、そこにかかわっている人たちすべてにとって、独立した、しかも共同して作る組織です。学びの場(学校)は、社会からの影響も受けますが、それと同時に、社会に対しても影響を与えるものです。

12.
学びの場(学校)で働く大人たちは、1から10までの原則を子どもたちの学びの出発点として仕事をします。

13.学びの場〈学校)で教えられる教育の内容は、子どもたちが実際に生きている暮らしの世界と、(知識や感情を通じて得られる)経験の世界とから、そしてまた、<人々>と<社会>の発展にとって大切な手段であると考えられる、私たちの社会が持っている大切な文化の恵みの中から引き出されます。

14.学びの場(学校)では、教育活動は、教育学的によく考えられた道具を用いて、教育学的によく考えられた環境を用意したうえで行います。

15.学びの場(学校)では、教育活動は、会話・遊び・仕事(学習)・催しという4つの基本的な活動が、交互にリズミカルにあらわれるという形で行います。

16.学びの場(学校)では、子どもたちがお互いに学びあったり助け合ったりすることができるように、年齢や発達の程度の違いのある子どもたちを慎重に検討して組み合わせたグループを作ります。

17.学びの場(学校)では、子どもが一人でやれる遊びや学習と、グループリーダー(担任教員)が指示したり指導したりする学習とがお互いに補いあうように交互に行われます。グループリーダー(担任教員)が指示したり指導したりする学習は、特に、レベルの向上を目的としています。一人でやる学習でも、グループリーダー(担任教員)から指示や指導を受けて行う学習でも、何よりも、子ども自身の学びへの意欲が重要な役割を果たします。

18.学びの場(学校)では、学習の基本である、経験すること、発見すること、探究することなどとともに、ワールドオリエンテーションという活動が中心的な位置を占めます。

19.学びの場(学校)では、子どもの行動や成績について評価をする時には、できるだけ、それぞれの子どもの成長の過程がどうであるかという観点から、また、それぞれの子ども自身と話し合いをするという形で行われます。

20.学びの場(学校)では、何かを変えたりよりよいものにしたりする、というのは、常日頃からいつでも続けて行わなければならないことです。そのためには、実際にやってみるということと、それについてよく考えてみることとを、いつも交互に繰り返すという態度を持っていなくてはなりません。

(リヒテルズ直子訳)




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イエナプランの授業風景‐オランダ報告3

リヒテルズ直子さんのご案内で、イエナプランの学校を中心に見学した。イエナプランの教育は、学年の違う子供たちを混合してクラスを編成し、学び合う共同体を作る。自分で学習計画を立て、各自で課題に取り組む。一方で、対話や観察を中心とした授業が展開されている。自立学習と協同学習を組み合わせたものである。


 私が見学した
20名のクラスでの学習風景を紹介する。3つの学年が1クラスに在籍。1学年6名が先生の周りに座り、算数の説明を受ける。1回の説明で理解した児童は、自席に戻り、課題を取り組み始める。もう一度、先生は、かみくだいた説明をする。児童が、分かるまで繰り返される。そして、次の学年が先生の周りに集まった。

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 説明を終えると、先生は教室を歩き、質問を受ける。みんなの前で質問するわけではないので、内気な児童でも大丈夫である。また、教室に備え付けられているPCの教材で調べている児童もいる。同じ班の先輩から教わる児童もいる。先輩も教えることで、理解が深まる。異学年混合クラス編成の利点だ。

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日本の塾で行われている個別教育の良さと、教室という社会の中で学び合う良さの両方が生かされた教育であった。

これで、学習は身についているか?そんな心配は不要である。全国模試のようなテストを行っている。点数を競うのではなく、今後の学習や指導の指針となる。本来の意味でのテストだ。結果によっては、心理学など専門家によるサポートも受ける。自由な教育が認められる反面、教育監督局の指導を受けており、自由放任なわけではない。

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※訪問校 ’t Kompas ヘト・コンパス小学校
Vlaardingen(フラールディンゲン)という都市にあるプロテスタント系の小学校。イエナプラン校ですが、ピースフルスクール・プログラムという、現在シチズンシップ教育のメソッドとして先端を切っているプログラムを採用している。
http://www.jenaplan-tkompas.nl/

※訪問校 ドクター・スハエプマン小学校
イエナプランの優良校の賞を取った学校。この学校は、4月13日に日本テレビで放映されるアナザースカイで、尾木直樹さんとともに訪れ紹介した学校です。

http://www.schaepmanschool.nl/


オランダは、移民も多く、多様な社会である。教育も、多様である。フレイネ、モンテッソーリ、シュタイナーなどの進歩的な学校やイスラム教の学校など、様々な教育が行われている。このイエナプランも、その中の一つに過ぎない。当然、オールドスクールと呼ばれ、教壇で先生が板書して、教科書を読む画一的な学校もあるということも触れておく。

 




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2012年05月05日

通知表とポートフォリオと三者面談-オランダ報告4

オランダイエナプランの学校での「教育評価」について、報告いたします。

通知表は、数値で表されていません。
国語、理科、社会、音楽といった教科ごとではなく、主体性などの姿勢や聴く力やプレゼン力などスキルについて、5つくらいの項目について、教員がコメントを記し、評価されています。

児童生徒・教員・保護者の三者面談は、年に3回程度開かれます。
ここでは、この通知表をもとに話し合われます。
子ども自身の評価と合わせて、話し合われます。
保護者も同席していますが、児童生徒-教員が話し合い、保護者は傍聴しているイメージです。

それぞれの児童生徒は、学びのポートフォリオを作成しており、自分自身の評価に役立てています。
一番よくできた作品や印象深い取り組みをファイルに保存しています。
たとえば、1年生の時に、きれいにアルファベットが書けるようになった時の練習プリントが保存されており、発達の過程をたどりことができます。

写真は、そのポートフォリオを見せてもらっているところ。
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それぞれの児童生徒のポートフォリオが、教室の棚に保管されています。
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卒業生のポートフォリオも、PCスペースの棚に保管してありました。
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2012年05月02日

リヒテルズ直子さんとの出会い‐オランダ報告1

私は、土浦日大高校で教諭を勤めていた。

生徒中心の学級運営、部活動や学生寮での自立的な組織作り、協同的な学びのの授業など、充実した教育活動であった。

しかし、大きな壁にも直面していた。
学校外での生徒を取り巻く環境だ。
家庭や地域、社会が与える生徒への影響は大きい。
経済不況で親が失業している家庭、TX新線開通や郊外大型店の進出によるまちの衰退。
治安の悪化、若者をねらった犯罪、「勉強したって社会の役に立たない」と言う大人。

「何とかしなければ」
そんな気持ちで解決策を模索する中で出会ったのが、リヒテルズ直子さんが書かれた『オランダの教育』だった。
その本を読み、社会を変える教育・教育を支える社会という視点を得たのであった。

それから約5‐6年が経った。
学校を離れ、研究だけではなく、地域に入って声を拾い、教育について考えてきた。
今回、そのリヒテルズさんに対面し、語り合い、オランダの学校をご案内して頂いた。


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