2008年11月14日
人を育てる時の心構え―出来ると信じ、待つこと
【人を育てる時の心構え―出来ると信じ、待つこと】
■はじめに
先日の講演で、ピグマリオン効果を少しだけ紹介しました。
なかなか興味深いものでもありますので、
あらためて取り上げます。
人を育てるとき、さらには、自分自身を成長させるとき、
意識して頂ければ、幸いです。
【本日の内容】
■ピグマリオン効果とは
■マイナスイメージの言葉遣いを控える
■ある学生の例
■やはり、愛があってこそ
■ピグマリオン効果とは
親や教師の期待により、
子どもの能力がその方向に変化する現象を言います。
「この子は、よくできる」と信じて接していれば、
「よくできる」人間に育つという理論です。
ハーバード大学の心理学者ローゼンタールの実験によれば、
知能テストを実施し、その成績と関係なく選んだ小学生について、
生徒Aは伸びると教師に伝えたところ、
1年後には、生徒Aの成績は著しく良くなりました。
ちなみに、この名は、
女性像を現実の女性に変えたいという強い願いを実現させた
ギリシアのピグマリオン王に由来します。
■マイナスイメージの言葉遣いを控える
逆に、「この子は、できない」と思って接していれば、
「できない」人間に育ってしまいます。
マイナスイメージの言葉遣いをしていませんか?
「どうして〜くらいできないの?」
「〜したらダメでしょ?」
「何度言ったらわかるの?」
このような言葉を与え続けられると、
感情的に拒絶し、言う事を聞かなくなります。
さらには、マイナス思考になり、「できない」と思い込んでしまいます。
人格を否定するような言葉遣いをしていませんか?
ダメ、頭が悪い、だらしない、のろま、
ぐず、ずるい、頼りない、気が小さい、・・・
特に、他人との比較は、人を傷つけることになります。
■ある学生の例
講演に参加した学生が、興味深い話を聞かせてくれました。
「なぜ、そんなに頭がいいの?」
「あなたは、よくできる子だ」
「あなたなら、出来る」
そう言われて育ってきたそうです。
親の期待に対するプレッシャーや
実力との葛藤などに苦しむことはなかったのか?
そんな質問もありましたが、そのようなことはなかったそうです。
本人は、希望する高校・大学に進み、
素直にノビノビと生活しています。
ここで気づかされたことがあります。
子に対して、「あなたは出来る」と思い込ませることは
プレッシャーをかけることになるかもしれません。
しかし、親が勝手に「この子は出来る」と思い込むだけなら
嬉しい勘違いで済んでしまうということです。
「あなたは出来る子だから、『〜して欲しい』」
『〜』が加わるから、プレッシャーになる可能性があります。
それに、「出来る」「すごい」など漠然としているので、
いろんな解釈が可能な点がミソかもしれません。
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■やはり、愛があってこそ
私が教員をやっていたとき、
特に根拠はなくても、この生徒は伸びると思っていました。
そういう私自身の性格なのでしょう。
実際には、なかなか伸びない生徒もいます。
しかし、もう少し経てば伸びてくるかもしれません、
あるいは、私が見落としているのかもしれません。
そう考えて接してきました。
この根底には、愛があります。
その人のことが好きだから、こんな態度でいられるのです。
期間内に成果が求められる現場では、
悠長なことは言っていられないわけですが、
「急がば回れ」
待ったほうが早く成果を出せることもあります。
長期的な視点では、有効的であることは間違いありません。
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■おわりに
大切であり、そして、難しいのは、信じ、待つことです。
人には、解決する能力があります。
人は、「育てる」のではなく「育つ」ものです。
なかなか思うようにいかないかもしれませんが、
愛をもって、ありのままを受け入れてあげてください。